葉酸と葉酸サプリの効果効能に関する信頼できる公的機関による情報まとめ

葉酸と葉酸サプリの効果効能に関して、私自身気になるところがあったので、信頼できる公的機関の情報を中心にここに情報源をまとめておこうと思います。

大量にリンクを貼ることで、見づらくなってしまう可能性があるため、最初に内容のまとめを記載しておくようにしますが、目的としては、訪れた人に全部を見て欲しいということではなく、「詳しく知りたくなったときに信頼できる情報源にアクセスしやすいようにすること」です。

やはり、妊娠や胎児に関わる情報である以上、テレビ番組がどうとか、どこどこの有名人がどうだとかっていう情報のキャッチーさよりも、情報の正確性を優先させたいというのが私のこのサイトでのスタンスです。

ただ、公的機関の専門文書というのは、用語が難解だったりと見にくくなりがちという欠点もありますので、各情報源のリンクを貼るに際して、簡単なまとめを付記しておきますので、それを見て、詳しく読むか、このページで概要を把握するのに留めるかをご判断いただければと思います。

なお、葉酸や神経管閉鎖障害等に関する重要な情報は、当サイトの下記でまとめているので、このページで出てくる専門用語がわかりにくいという方は、先にこちらを読んでおくとよいと思います。
そもそも葉酸(ビタミンB9)とは何なのか?一から説明を試みる
葉酸不足で胎児に起きる病気の神経管閉鎖障害とは?

葉酸と葉酸サプリの効果効能に関する信頼できる公的機関による情報まとめ

最低限の内容だけここにまとめておきますので、時間のない人は、下記のポイントだけ把握しておくとよいと思います。

・神経管閉鎖障害の先天異常発症リスクが葉酸摂取によって下がることは、欧米や中国の研究で実証されている
・欧米や日本では、食事の他に葉酸サプリ等で1日0.4mg(400μg)の葉酸摂取が推奨されている
・先天異常の多くは妊娠10週未満で発生するため、妊娠発覚前の妊活中から葉酸サプリを摂取する必要がある
・食生活の変化等により、先天異常の二分脊椎症の発症率は30年前と比較して約3倍に急増している
・葉酸にはサプリの主成分であるプテロイルモノグルタミン酸と、食事由来の主成分であるポリグルタミン酸型の大きく2種類がある
・食事性葉酸は、葉酸サプリの葉酸の半分しか吸収されない。つまり葉酸サプリの1日0.4mg相当の葉酸を食事で摂取するには、1日0.8mg摂取しなければならなくなる
・葉酸の食事摂取推奨量は、18歳以上の女性で1日240μg(0.24mg)、妊婦は1日480μg(0.48mg)、授乳婦は1日340μg(0.34mg)。妊婦はさらに葉酸サプリで1日400μg(0.4mg)の葉酸摂取が推奨されている
・ビタミンB12欠乏性の貧血診断を困難にするので、葉酸は1日1000μg(1mg)以上摂取してはいけない

葉酸と葉酸サプリの効果効能に関する信頼できる公的機関による情報詳細

厚生労働省や環境省など、公的機関による信頼のできる葉酸情報に関するソースを下記にまとめておきます。すべてをじっくり見るのはきついと思うので、それぞれのソースを簡単にまとめたものを下に付けています。

厚生労働省:神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について
平成12年(2000年)に記載がされた、厚生労働省による葉酸サプリ摂取推奨に関する報道発表資料。非常に重要な情報が数多く書かれているので、これだけは全文読むべきかもしれません。概要は以下のとおり。

・欧米を中心にした疫学研究の結果や、中国南部における研究により、葉酸の摂取により二分脊椎等の神経管閉鎖障害の先天異常発症リスクを下げられることが報告されている
・日本では元々二分脊椎の発症率は低かったが、食生活の変化により二分脊椎の発症率が増加傾向にある
・日本での神経管閉鎖障害の発症率は1万人に6人の割合で、うち二分脊椎は3.2人
・葉酸が神経管閉鎖障害の発症に関わっていることは医学的な根拠が示されている
・欧米では1990年代から葉酸摂取による神経管閉鎖障害の発症リスクの低減対策が実施されている
・あくまで葉酸の摂取不足は神経管閉鎖障害の一要因であり、葉酸摂取でのみ予防できるものではない
・葉酸は妊娠中だけでなく、妊娠前から摂取を行う必要がある
・野菜を1日350g摂取すれば、葉酸の目標摂取量である1日0.4mgを摂取することは可能
・ただし、食事由来の葉酸の利用効率は確定していない
・米国の研究では神経管閉鎖障害の発症リスク低減には食事の他に葉酸サプリ等で0.4mg取ることが推奨されている
・上記を根拠に、日本では食事の他に葉酸サプリから1日0.4mg以上の摂取を推奨
・ただし、葉酸摂取量は1日1mgを超えるべきではない。ビタミンB12欠乏の診断が困難になるため
・先天異常の多くは妊娠10週未満で発生し、特に中枢神経系に関しては妊娠7週未満で発生する
・そのため、妊娠の1ヶ月前からの摂取を推奨している
・葉酸は熱に弱く、水溶性のため、調理時に50%が失われ、茹で汁にも溶けやすい
・葉酸サプリの葉酸の利用効率は85%で、食品中の葉酸の利用効率は50%と見積もられている
・疫学研究では1日0.36~0.5mgの葉酸摂取で神経管閉鎖障害の発症リスクが低減することがわかっている
・主要国の葉酸摂取推奨量は1日0.4mg~0.5mgで、日本でもこれを踏まえて葉酸サプリから1日0.4mgの摂取を推奨

以上、重要と考える情報だけを抜き出しましたが、それでもこのボリュームになってしまったので、かなりの公的な重要情報であることがわかるかと思います。神経管閉鎖障害の発症リスク低減のエビデンス(医学的な根拠数値等)も上記資料にはまとまっているので、厚生労働省によるこの資料は、まずご覧いただくことをおすすめします。


環境省 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査):保健に関する統計
新生児に関する様々な統計が記載されているので、一度ご覧いただくとよいかと思いますが、葉酸と神経管閉鎖障害に関連する特に重要な情報は下記のグラフ。
昭和49年~55年(1974年~1980年)の時点では1万人に1.8人程度だった二分脊椎症の発症率が、平成18年~22年(2006年~2010年)の時点では、1万人に5.4人程度と、30年前との比較で二分脊椎症の発症率が約3倍になっていること。医療水準が向上している中で、神経管閉鎖障害である二分脊椎症の発症率がこれだけ増えているということは、食生活の変化が関連していると見てよいでしょう。

あくまで葉酸は、神経管閉鎖障害リスクを低減する一要因でしかありませんが、効果効能に関しては、医学的な根拠が示されているので、できることは取り組んでおいたほうがよいかと思います。


厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書
厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要
厚生労働省による葉酸の食事摂取基準に関する資料です。数値は下記の通りで、18歳以上の女性は1日240μg(0.24mg)の食事摂取が推奨されており、妊婦の方は1日480μg(0.48mg)の食事摂取に加えて、別途葉酸サプリからの1日400μg(0.4mg)の摂取が推奨されております。授乳婦に関しては1日340μg(0.34mg)の食事摂取が推奨とのこと。

ちょっとこの資料、わかりにくいので補足します。葉酸の摂取推奨量の付加量に関して、妊婦は240μg、授乳婦は100μgと記載があり、さらに注意事項として付加的に400μgのサプリでの葉酸摂取が必要と記載されていて、一体妊婦は何μgの葉酸を摂取すればよいのか、非常にわかりにくい不親切な書き方になっています。

これ、そのまま読むと、妊婦は一般女性の240μg+妊婦の付加量240μg+神経管閉鎖障害リスク低減の400μgの計880μgを取らなければならないのかと解釈してしまいますが、そうではありません。下記の詳細資料の方をよく読むと、妊婦と授乳婦の付加量の設定根拠に関する記載があるのですが、この付加量というのは、貧血防止の観点から設定された付加量なのです。

一方、注釈にあるプテロイルモノグルタミン酸(サプリの葉酸)の400μgという値は、先天異常の一つである神経管閉鎖障害のリスク低減の観点から設定された付加量です。つまりサプリで400μg葉酸を摂取しておけば、神経管閉鎖障害リスクも、貧血のリスクも低減できることになるので、妊婦、授乳婦ともに普通の食事による1日240μgの葉酸に加え、サプリで1日400μg摂取すればよいという解釈でOKです。


厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書 ビタミン(水溶性ビタミン)
先にご紹介した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」をさらに突っ込んだ内容で、葉酸に関して、化学式等も含めて、かなり詳細な記載があるので、興味のある方はご覧になってみるとよいと思います。特に重要な点だけここにまとめておきます。

・葉酸にはサプリの主成分であり吸収がしやすい プテロイルモノグルタミン酸と、食事などで摂取する場合の主成分であり、吸収性が悪いポリグルタミン酸型の2種類がある
・そのため、食品中の葉酸はプテロイルモノグルタミン酸と比べて 25~81%しか吸収されず、平均すると約50%しか吸収がされない
・食事性葉酸を吸収される形にするにはビタミンB12も一緒に取る必要がある
・葉酸サプリ等でプテロイルモノグルタミン酸を摂り過ぎると、ビタミンB12欠乏症による貧血が発見しにくくなる問題が発生する

葉酸の摂取量に関する記載は、先の「厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」に記載された表と同じものなので省略。プテロイルモノグルタミン酸とかポリグルタミン酸型ってなんなんだ、とイメージが湧かない方もいると思うので、そちらは別途下記にまとめました。
葉酸と プテロイルモノグルタミン酸とポリグルタミン酸型について
つまりは、プテロイルモノグルタミン酸というのが葉酸の基本形で、それにいろいろ余計なものがくっついて吸収が悪くなっているものがポリグルタミン酸型ということです。


厚生労働省:国民健康・栄養調査
厚生労働省による、性別、年齢別の平均栄養摂取量などがわかるページ。これを参考にすることで、自分があとどれくらい栄養を摂取する必要があるか、目安ができるかと思います。妊活中の方や妊婦の方に特に関連が深いのは、下記の部分になるかと思います。
栄養素等摂取量(1歳以上、女性、年齢階級別)

これによると、葉酸の平均摂取量に関しては、20代が217μg、30代が233μgとのことなので、妊活中の方や妊婦の方は、食事から1日480μg、サプリから1日400μgの摂取が推奨されていることを踏まえると、今までの日頃の食事プラス260μgの食事摂取が必要になるということになります。

Data and Statistics | Birth Defects COUNT | NCBDDD | CDC
CDC(Centers for Disease Control and Prevention)というアメリカ保健福祉省の機関である疾病対策センターによる、各国の葉酸強化法令施行前と施行後の神経管閉鎖障害の発症率の変化をグラフで示したものです。

それぞれ新生児1万人に対する発症率を示したものですが、アメリカでは36%、カナダでは46%、地理では50%、コスタリカでは35%、南アフリカでは31%もの神経管閉鎖障害発症数の低下が確認されたというものです。

なお、少し補足しておくと、2013年時点で76カ国が、主要穀物(主に小麦)での葉酸強化の法令を施行しています。アメリカでは葉酸強化法令は1998年にパンやシリアル、米などの主要穀物に葉酸を入れるという内容で施行され、カナダでは1998年に100gの穀物に150μgの葉酸を入れるという内容で施行されました。いずれも神経管閉鎖障害の発症率を下げることが目的のものです。