葉酸とプテロイルモノグルタミン酸とポリグルタミン酸型について

厚生労働省が出している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」を見ていったときに、葉酸の化学式などが登場する、かなり専門的な用語を用いている箇所があったのですが、そのままだと理解が難しかったので、追加で調査をして、理解できたことをここにまとめておこうと思います。該当箇所は下記。
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書 ビタミン(水溶性ビタミン)

この資料の記載によると、葉酸とはp-アミノ安息香酸にプテリン環が結合し、もう一方にグルタミン酸が結合した構造であり、プテロイルモノグルタミン酸を基本骨格とした化合物で、さらに天然の葉酸はポリグルタミン酸型が多いという、全く何を言っているのかわからない文章になっています。

ただ、どうも葉酸を理解するにはプテロイルモノグルタミン酸というものがキーになっているようなので、そこを中心にして読み解いてみようと思います。

上記の説明を、図に対応させると、プテロイルモノグルタミン酸というのは、下記のような構造になっています。真ん中にあるのがp-アミノ安息香酸で、それにプリテン環とグルタミン酸がくっついている構造。
で、ここで重要なのが、このグルタミン酸の部分は、天然のものだと何個もくっついている可能性があるということです。モノグルタミン酸とか、ポリグルタミン酸型とか言っているのは、ギリシャ語のmono-(単一の)、poly-(多数の)に由来しているわけです。

なので、狭い意味での葉酸は、このプリテン環とp-アミノ安息香酸と1つのグルタミン酸(モノグルタミン酸)で構成されているプテロイルモノグルタミン酸なのですが、天然のものだとグルタミン酸がたくさんくっついているポリグルタミン酸型のものもありますよ、というのがここで言っている意味になります。

で、くっついているグルタミン酸の数が違うと、当然重さも変わってくるわけなんですけど、食事摂取基準の数値としては、基本形のプテロイルモノグルタミン酸の量で書かれているとのこと。なので、モノもポリもある天然の葉酸は、モノのみの量に換算することになるので、ちょっと量を減らして考える必要があるということです。つまりは食事摂取基準の数値よりも多く葉酸を摂取する必要があるということです。

逆に、葉酸サプリの場合は、すべてプテロイルモノグルタミン酸なので、基準量通りに摂取すればよいということになります。


このように、食品中に含まれる葉酸と、葉酸サプリに含まれる葉酸は、少し異なる性質があるようです。結論としては、葉酸サプリの葉酸のほうが体に吸収されやすいとのこと。

食品中に含まれる葉酸の特徴としては、
・ポリグルタミン酸型であり、さらにそこにタンパク質がくっついている
・調理によって壊れやすい
・吸収が悪い
の3つがあります。吸収率については、葉酸サプリに含まれるプテロイルモノグルタミン酸と比べると、25~81%程度になるようです。日本の食事における平均で言うと50%程度とのこと。

この吸収率の差から、葉酸サプリでの葉酸摂取量と、食事による葉酸摂取量に関しては、基準が異なっています。つまりはサプリで摂取すべきとされている1日400μg(0.4mg)の葉酸を、通常の食事で取ろうとすると、1日800μg(0.8mg)相当を摂取する必要があるということです。

この、葉酸の吸収率の違いから、食事による葉酸(食事性葉酸)と、葉酸サプリによる葉酸の量の計測の仕方が異なっているという点は、いろいろ葉酸に関して調べる際には注意をした方がいいと思います。

なお、サプリの葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)にも欠点があって、摂り過ぎるとビタミンB12不足による貧血を発見しにくくなるようです。なので、厚生労働省もサプリでの葉酸摂取は1日1mg(1000μg)を超えてはいけない、というガイドラインを出しています。


以上、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の葉酸の項目を読み解くのに必要な情報として、ご参考いただければと思います。